2022年のペナントレースも折り返し地点を過ぎました。
今季話題になっているのが佐々木朗希の完全試合を始め、ノーヒットノーランが多数記録されていることもあり、投高打低の傾向が顕著と言われています。
なぜ、このような現象が起きているのでしょうか?そのことについて検証していきたいと思います。
結論から書きますと、NPB全体ではなくパリーグ側に問題があるようです。
検証
個人記録の比較
まず、打者、投手の個人成績の比較をしていきますが、使用球はNPBの見解通り、規制数値内であるという前提で話を進めていきます。
NPB「飛ばないボール」否定 今季「投高打低」の声も統一球変更なしと説明(スポニチアネックス)
両リーグの打率、本塁打数、防御率の1位、5位、10位の選手をリーグごとに比較していきます。
打率 | セリーグ | パリーグ |
1位 | 宮崎.324 | 松本.360 |
5位 | 村上.307 | 野村.285 |
10位 | 牧 .283 | 柳田.266 |
本塁打 | セリーグ | パリーグ |
1位 | 村上29 | 山川27 |
4位タイ | 丸、ウォーカー17 | 清宮、オグレディ11 |
10位 | 塩見12 | 吉田8 |
防御率 | セリーグ | パリーグ |
1位 | 青柳1.36 | 佐々木1.48 |
5位 | 床田2.78 | 千賀2.00 |
10位 | 大瀬4.05 | 岸2.90 |
※いずれも7月12日終了時 本塁打は4位タイを記載。
まず打率ですが3割打者の数の比較ではセが6名に対し、パが1名のみ。
一方、防御率は1点台の投手がパが4名に対し、セが1名のみと対照的になっています。
昨季からの変遷を確認すると3割打者、防御率1点台投手との数を比較すると3割打者がセが7→6名、パ4→1名、防御率1点台の投手がセ0→1名、パ1→4名ですから、セ・リーグは昨季とは大きな変化が見られないのに対し、パ・リーグは投高打低の傾向が一層、顕著になっています。
年によって変わってはくるのですが、3割打者は最低5名以上、多い時は10名を越す場合もあります。
現在、使用球は12球団共通ですから、パ・リーグのみ飛ばない球を使用しているという仮説は成り立ちませんので、条件は同じはずです。
しかもパの首位打者の松本が.360ですから、ボールが飛ばないという仮説を立てると、例年の状況ならば、松本の想定される打率はとんでもない数字になってしまいます。
セ・リーグの本塁打数も二桁本塁打を記録している選手が12名(7月12日現在)とそれなりの人数ですので、全体的に打者受難ということでなく、パ・リーグの打者限定で考えるべきだと思います。

ノーヒットノーランの検証
2022年7月12日現在、完全試合を含むノーヒットノーランが4度達成される、稀有なシーズンということから、投手優位のシーズンと語られることが多くなっています。
それでは、その4度のノーヒットノーランの達成状況を確認してみましょう。
- 4/10 佐々木朗希(ロッテ) vsオリックス ※完全試合
- 5/11 東浜巨(ソフトバンク)vs西武
- 6/ 7 今永昇太(DeNA). vs日本ハム ※交流戦
- 6/18 山本由伸(オリックス) vs西武
振り返ってみると、4回とも全て、ノーヒットノーランを許したチームがパ・リーグのチームでした。
このような大記録は運の要素も強く働きますので一概に言えませんが、パ・リーグの打者の力不足がノーヒットノーランの記録を連発しているとも言えそうです。
交流戦・日本シリーズの検証
ここで両リーグの実力差を確認する上で交流戦の対戦成績を見ていきます。
過去の成績をみると、パ・リーグが勝ち越しするのが当たり前のようでしたが、昨年、今季と僅かではありますが、セ・リーグ側が勝ち越ししています。
しかも、その前でセ・リーグが勝ち越ししているのは2009年まで遡りますし、セ・リーグの2年連続交流戦勝ち越しはもちろん初めてです。
あと、昨季の日本シリーズはセ・リーグ覇者の東京ヤクルトが制したのも、記録に新しいところ。日本シリーズのセ・リーグ制覇は2012年以来、そして同じ年に交流戦、日本シリーズを制したのは2009年以来です。
日本シリーズも2013年以降、パ・リーグのチームが制しては来ていますが、正直ソフトバンクがセ・リーグの各チームに強かったと表現する方が正しいのかと思います。
2013年〜2020年までパ・リーグが日本シリーズ8連覇ですが、そのうちソフトバンク以外のチームが絡んでいるのは2013年の楽天と2016年の日本ハムだけ。
2019、2020年の日本シリーズはソフトバンクが巨人に4連勝したことが話題になりましたが、この結果で見えることはパ・リーグがセ・リーグに強いのではなく、ソフトバンクが巨人に強かったということしか、読み取ることはできません。
明らかにリーグ間の力関係でパ・リーグ優位という状況は終わったとみるのがいいかと思います。
仮説
ここまでの内容を振り返ると
- パ・リーグのみ、極端な投手好調、打者低調の成績
- 今季、ノーヒッターを許したのは全てパ・リーグ
- 交流戦、日本シリーズの結果も以前ほどパ・リーグの優位性は感じられない
ということでした。
このことから導き出される仮説を立ててみると、

パ・リーグの打者陣が以前より力が落ちているのではないか?
ということになります。
以前はパ・リーグの高レベルの投手と対戦することによって、打者のレベルが上がり、そしてリーグのレベルが上がり、セ・リーグとの差が開いたと通説がありましたが、現在はパ・リーグ投手陣のレベルアップはされているものの、打者が投手の進化についていけてないということが考えられます。
一方、セ・リーグ側もパ優位の状況を指を咥えたまま、見ているだけではもちろんありませんでした。
昨年の東京五輪では野手の中心選手はセ・リーグの選手が多かった印象もありますし、レベルの高い野手がセ・リーグに育ってきていることでパ・リーグの投手にも対抗できるようになってきているので交流戦などで互角の対戦成績になってきていると考えられます。
パ・リーグの過去3年の3割到達者の人数を確認すると6→4→4と減少しており、打率10位の選手の打率推移を確認すると.287→.275→.277と3割を大きく割り込んでしまっていました。
これらの数値を見ても、パ・リーグ側の打力低下は今季に始まったことではなく、ここ数年の流れであったことがわかります。
理由
では、なぜそうなってしまったのでしょうか?
先にも書いたように投手のレベルアップにパ・リーグの打者が対応しきれていないことは確かなようですが、それ以外の要因を探っていきたいと思います。
まず、選手の入れ替えですがFAなどでパリーグの野手がセ・リーグ、MLBの移籍がないか確認したところ、秋山、大谷がMLBへ移籍したくらいでした。
一方、ドラフトですとセ・リーグ側に村上を始めとして坂倉、牧、佐藤輝など若手のイキのいい選手が台頭してきており、一方、パ・リーグの若手野手は有望株こそ多いものの、まだリーグを代表するような選手までには育っていない状況です。
セ・リーグの若手野手の台頭でパリーグの優秀な投手に対抗できる力をセ・リーグのチームが持つことができるようになった、一方、パ・リーグは野手の新陳代謝がうまくいかず、結果、極端な投高打低の現象がパ・リーグのみ発生したと考えられます。
まとめ
ここでは、一般的に言われている今季の極端な投高打低、それはパ・リーグのみ発生している現象で、考えられる原因としてはパ・リーグ野手陣の新陳代謝がうまくいっていないことを挙げてきました。
それでは、今後も同じ状況が続くのでしょうか?
その答えとしては、あくまで一過性のものと考えています。
前にも書きましたが、パ・リーグの野手有望株が高卒に集中しており、現在育成途上の選手が多いです。
その選手達が成長してくれれば、パ・リーグの優秀な投手に対応できるようになり、投高打低の図式は崩れていくことが考えられます。
今後のパ・リーグの覇権を取るには、強力な若手野手をどれだけ揃えることができるか、という争いになってくるかと考えられます。
そんな視点で見ると今後のプロ野球、パ・リーグの野球が面白く見ることができるかも知れません。
というわけで以上、ハムかつサンドでした。
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